2025/09/02 19:00
大地が育む物語
フランス北部・パリの北に広がるピカルディー地方。この土地はシャンパーニュに隣接し、冷涼な気候と豊かな土壌に恵まれた、まさにテロワールの真髄が息づく場所です。ここで生まれた〈1688〉は、フランスのワイン文化に深く根ざした思想を受け継いでいます。
テロワールとは、気候・土壌・地形、そして人の技術が融合し、唯一無二の味わいを生み出すという考え方。同じブドウでも土地によって味わいが異なる、その神秘を現代に伝えるのが〈1688〉なのです。
歴史の中で忘れ去られたレシピ
〈1688〉という名は、1688年に残されたレシピに由来します。歴史の中で眠っていたその配合を、名門シャンパン醸造所の職人と現代ソムリエが丹念に読み解き、時を超えて復刻しました。
発酵させることでアルコール度数が発生する一般的なシャンパンとは異なり、後から炭酸を注入する独自の製法を採用。それによりブドウ本来の華やかさと優しい甘みを際立たせたスパークリングに仕上がっています。さらに、アルコール度数を気にせず愉しめる点も大きな魅力です。
恋が叶う特別な飲み物
このレシピの裏にはロマンチックな伝説があります。かつてシャンパーニュ出身の司教様が「永遠の愛をもたらす妙薬」の製法を記したとされる書簡を残し、1668年に逝去しました。
時を経てその書簡を託された青年オノレは、心に決めた女性と永遠の愛を誓う際に封印を解き、その一杯を分かち合います。やがて彼らの食卓に招かれた恋人たちは必ず結ばれるとの噂が広まり、オノレは愛の魔術師だ語り継がれるようになったのです。
しかし、その妙薬の製法は明かされることはありませんでした。
永い時を超えて蘇った奇跡
時は移り240年後、ベルエポック時代の1928年パリ。サン・オノレ地区の建物改修の際、壁の中から木箱に入った古い封書が発見されました。そこには、赤白葡萄によるノンアルコールのロゼの製法と1688年に遡るレジェンドが記され、あのオノレのサインがあったのです。
そこからさらに66年後の1988年、セーヌ河畔の古書市で奇跡的に掘り起こされたこの封書をもとに、現代の醸造家とソムリエの手によって〈1688〉が復活します。
三世紀以上の時を超え蘇った〈1688〉は、伝説と現代技術が融合した唯一無二の存在。グラスを傾けるたびに、時空を超えたロマンが広がります。